法話を聞く・読む / 今月の法話 バックナンバー(No.415)

今月の法話 バックナンバー

令和4年11月 No.415
仕合せは べるものではなく づいていくもの

「しあわせって何だっけ♪何だっけ♪」

 今から40年ほど前、明石家さんまさんが出演されていた調味料のテレビコマーシャルです。その中ではお鍋の映像が象徴的に使われていました。当時、お鍋と言えば家族や友人と、つまり複数でいただくものであったのでしょう。賑やかにお鍋をつつきあう姿、それが「しあわせ」を感じさせたのかもしれません。2022年の今、ずいぶん変化しました。いろんな場面で「ひとり」が強調される時代です。一人鍋、一人焼肉、私も結構好きです。

 何をもって「しあわせ」とするのか、これは人それぞれ違うとしか言いようがないのかもしれません。そう言いながら、我が子たちには「いい学校に進学していい大学に、そしていい会社に」と願いがちな自分がいます。いい学校って具体的にどんな学校でしょうか。いい会社ってどんな会社なんでしょうか。案外ちょっと有名、周りの人よりいいところ、そんな感覚なのかもしれません。

 一人の高校生とのお話を紹介させていただきます。その女の子は希望した高校に進学しましたが、しばらくすると学校を休みがちになります。そして1年生の終わりに、当初入学したその高校から別の高校へと編入試験を受けることを決断しました。その意志を確認するために、校長先生、教頭先生、学年主任、そして担任の先生と本人及び保護者で面談が実施されました。その学校は、英語教育に力を入れているそうです。海外留学制度もあり、そのことを生徒全体に勧めていたと聞いています。面談で彼女は先生方に次のように言ったそうです。「留学していい大学に入れば、いい会社に就職できる。そうすれば幸せになれる、これまでそう言われてきましたが、私はそれが幸せだとは思えません」なかなか言える台詞ではありません。実際にそれが幸せかと聞かれれば「必ずしもそうとは言えない」と答える人も多いでしょう。それでもそこを求めてしまう部分も、認めざるを得ないところではないでしょうか。娘さんのその言葉を横で聞いていた保護者の方は「なんてかっこいいんだと思いました」と聞かせてくださいました。

 私は今も隣や周囲と比べて生活しています。比べることから解放されればとも思いますが、なかなかそうもいかないようです。「比べてしまう私だ」と知らされたときに「おっと、いかんいかん」と立ち止まれることが大切なのかもしれません。

福岡県福岡市 正法寺 志摩田 真生

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